【同人RPG】異世界の恥はかき捨て『転生したら巨根オークだった件。』

異世界に勇者として召喚されたはずだけど性欲が強すぎたせいでオークに変異して召喚されてしまった主人公大久保。

召還された理由である「魔王を倒す勇者」という肩書通りに世界を救うシナリオが本筋になるが、雑魚敵は触れたら死ぬしボスもワンパンで死ぬという最強なろう系なので戦闘は単発イベントでしかなく、自身を異世界に召還した女神様だろうが魔王だろうが名も無きモブだろうが暴れん棒で「オラァッ」と分からせるのが本題である。

ゲームのジャンルはRPGだが戦闘は無いに等しいのでサクサクのテンポを生み、勝手に壺やタンスを調べて中身を拝借する権限を与えられた勇者として魔王の魔の手から世界を救う。

プロローグからしてやることは典型的なRPGの主人公なのだが、性欲の強さゆえオークに転じてしまったことを開き直り、壺やタンスどころか人体の神秘までも好き勝手にしてしまう勇者大久保。

その武勇伝を紐解いていくシナリオ展開が、自身を召還した女神様や従者とのノリとツッコミのバカゲー珍道中として描かれ、ネタとマジを混ぜたテキストでありながらもキャラ描写を深め魅力を作り出していることがこのゲームの特徴である。

転生するプロローグから魔王を倒すエンディングまで一貫して雰囲気を崩すことなく続けてくれるので、ちょっとクドい場面もあるけど一度でもノリが合えば関心が散ることなく読めると思う。

魔王討伐の旅に同行する女神様や従者との掛け合いやサブイベントでの掘り下げなどにより、主人公が勇者として選定された理由や他のキャラの思惑などが次第に明かされていく過程で登場人物像が次第に形になり出来上がっていく様が実感でき、食傷も甚だしい転生なろう系でありながら魔王討伐の王道展開を夢中になって読んでいる自分がいた。

豊富なテキスト量やサブイベントでキャラの掘り下げをするなど、バカゲーでありながら人物や背景の描写はよくできているので、6時間程度でクリアまで行ける短編ゲームでありながら、エピローグになると「もう読めないのか」と終わってしまうことが残念に思えるほど寝室でなく楽しさに突き動かされる形で攻略をさせてくれた。

それくらいサクサクのテンポとしっかり関係性を描写しているテキストが面白さで結びついていた。

寝室要素はオークなだけに人外すぎるし全身白濁まみれになるなど内容も尖っているので特殊な癖を持つ人でないとスキップ案件……になると思うが、ここも内容がふざけていたりすれ違いコントのようになっていたりでバカゲーとして楽しめるものになっているから侮れない。作りこみの熱意すら感じられた。

このゲームは「DLsite Award同人ゲーム部門」で「優れたストーリー賞」を受賞したとか。どんな権威があるのか全くわからないけど、最初から最後まで楽しく読めたので評価が高いのは納得でき、それはクリア後を描く後日談を読み終えるともの悲しさを覚えたほど。

ネタに全振りしたタイトルでありながらキャラ描写がとてもよく掛け合いすら楽しく読ませてくれるRPGです。

・後日談あり

・回想全開放可

・テキストスキップあり

・声なし